2 西群の寺院
■チケットショップと入口


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チケットオフィスで入場券を購入。入場料250ルピー。 入り口の荷物検査に時間がかかる。


■西群の寺院の配置


カジュラーホ KHAJURAHO MAP 西群の寺院の中で最も重要な寺院は、カンダーリヤマハーデーヴァ寺院だ。まず、そのカンダーリヤマハーデーヴァ寺院を見学してから、左図のように時計回りに遺跡巡りを行った。

・寺院の見学順
1、カンダーリヤマハーデーヴァ寺院 (Kandariya Mahadeva Temple)
2、ジャガダンビー寺院 (Devi Jagadambi Temple)
3、チトラグプタ寺院 (Chitragupta Temple)
4、ヴィシュワナータ寺院 (Visvanatha Temple)
5、ラクシュマナ寺院 (Lakshmana Temple)
6、マータンゲーシュワラ寺院 (Matangesvara Temple)


1、カンダーリヤマハーデーヴァ寺院  (Kandariya Mahadeva Temple)


カンダーリヤマハーデーヴァ寺院は、11世紀半ばに建立されたシヴァ神を祀るカジュラホ最大の寺院で、基壇からの高さは30メートルに及ぶ。

名前のカンダーリヤは「シヴァ神」、マハーデーヴァは「カイラーサ山」を意味する。

シカラという高い塔を本殿に持つ北インド型のカジュラホの寺院は、メール山(須弥山)を中心としたインドの宇宙観を造形化したものという。
カンダーリヤマハーデーヴァ寺院平面は
❶前殿、❷マンダバ、❸大マンダバ、❹聖室(ガルバグリハ)で構成され、
聖室の周りを回廊が巡り、5か所にバルコニーが設けられている。


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遺跡公園の遊歩道を歩いて行くと、目の前に最も重要な遺跡群が見えてきた。向かって、左からカンダーリヤマハーデーヴァ寺院 、真ん中の足場の組んである小祠堂はシヴァ祠堂、右がジャガダンビー寺院。


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カンダーリヤマハーデーヴァ寺院に代表される、ヒンドゥー寺院の奥へ向って塔状部が連なる寺院形態は、ヒマラヤ山脈の峰の連なりを象徴している。


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寺院の入口。 聖室内には、高さ2.5メートルのリンガが祀ってある。


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入口上部の彫刻はマカラから花綱が伸び、そこに人物像が置かれている。クメール遺跡のサンボールプレイクック様式と同じモチーフだ。エローラでもこのモチーフを見たが、こんな事がクメール遺跡好きにはすごく面白い。



エローラ第15窟(サアヴァターラ窟)の舞楽殿、窓の上の彫刻。



ラオスのChampasak Provincial Historic Museum のサンボールプレイクック様式のまぐさ石。インドの建築装飾であるマカラを両端に配し、その口から吹き出されたアーチ上に1つか3つのメダルが配置され、下に花輪(蓮の花)が垂れ下がる。しばしば、マカラの上に乗る人物が彫られている。


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このポーチの天井の精緻な彫刻の美しさには、思わず息を飲む。4隅にはマカラが配置されている。


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同じくマンダバの天井にも感動を覚える。


マンダバの天井伏図と断面図。


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マンダバ内の彫刻の素晴しさに瞠目する。のびのびとした肢体の表現が見事だ。正面の龕の中には神像が彫られ、壁面にはミトゥナ像も彫られている。


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シカラ(高塔)の周囲には、相似形の小型シカラが84も積み重なって大シカラをなし、壮麗さを生み出している。シカラの頂部には、聖なる果実(アンマロク、アーマラ)を模った溝付き円盤(アーマカラ)が載り、更に神酒をあらわす水瓶型の頂華(カラシャ)が載っている。


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シカラの側面を三条の帯状に彫刻がなされ、壁面の中央凹部にはミトゥナ像が彫られている。


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一番上部の4Pのミトゥナ像。



このカジュラホを代表する有名なミトゥナ像は、一男三女の組み合わせの性行為である。これは想像図的なものではなく、「カーマスートラ」の中の「牛の群れ(ガウテイカ)」という性愛図である。


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壁面をギッシリと埋める、おびただしい彫刻群には圧倒される。 柱部の中央には神像が置かれ、左右には色々な姿態の女性像が配置されている。



シカラの側面を三条の帯となって隙間なく彫刻が刻まれ、まるで空白部を恐れる「空間恐怖」をも感じさせる。


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柱や梁の部分には簡潔な草花文様が刻まれ、動的な人物像を際立たせている。


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チャンデーラ朝の紋章である、獅子と戦士の像が入口に置かれている。 基壇部に施された彫刻。


2、デーヴィー・ジャグダンベ寺院  (Devi Jagadambi Temple)


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このジャガダンビー寺院と上記のカンダーリヤマハーデーヴァ寺院は、同一の基壇の上に建っている。チトラグブタ寺院と同時期の11世紀に建てられ規模も形式も似ている。


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ポーチ側から眺めたジャガダンビー寺院。回廊はなくポーチとマンダバが一緒になったオープンマンダバになっている。


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マンダバと正面は聖室。 マンダバ内の彫刻は彫りが深く秀逸だ。破壊されているのがまことに残念。


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本尊のパールヴァティー(シヴァ神の妻)像。何か不気味な感じだ。元はヴィシュヌ神が祭られていたらしい。右の写真のヴィシュヌ神像はその証左か。 マンダバ内の彫刻。右側のヴィシュヌ神と、左側の女性は腰布の紐をほどいて股間を露出している。


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壁面彫刻は優秀だ。先ほど見学したカンダーリヤマハーデーヴァ寺院のような派手なミトゥナ像は見当たらない。


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二層の帯状に壁面彫刻がなされている。


■マハーデーヴァ寺院 (Mahadeva Temple)と基壇



マハーデーヴァ寺院はシヴァ神の小祠堂。 聖室と開口部の彫刻。


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三っの寺院が乗っている広い基壇部には、他の遺跡の彫刻がはめ込まれている。 ガネーシャ像。


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ミトゥナ像と獅子に似た怪獣シャールドゥーラ。


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ジャガダンビー寺院側から眺める。同一基壇上の奥はカンダーリヤマハーデーヴァ寺院 。


3、チトラグプラ寺院  (Chitragupta Temple)


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チトラグプタ寺院は11世紀初めの建立で、大きな寺院であるのに聖室の周りには回廊もバルコニーもない。カジュラホでは珍しく太陽神スーリヤを祀る。



マンダバには4本の柱が立ち、上部には梁で結んだドーム型天井がかかる。奥には聖室の入口がある。


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マンダバの天井の精緻な彫刻。


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聖室内の太陽神スーリヤ像。 聖室内の彫刻の素晴しさに瞠目。破壊された部分が痛々しい。


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マンダバの壁面の下に彫られたシヴァ神と妻のパールヴァティー像。創建当時のままの赤色塗料が残っている。


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マンダバ内の舞台。ここで踊り子が踊りを神に奉納した。 この場所に楽師が座り、演奏した。


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シカラ側面の彫刻。上の龕には、髭面のシヴァ神と妻のパールヴァティーが彫られている。


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ヨガをするアプサラ。 ミトゥナ像と、右側の女性は鏡見ながら額に既婚者の印である赤い粉(シンドゥーラ)をつけている。


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ヒンドゥー教の行者は、とても絵になる。 この寺院のミトゥナ像は少ない。


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この牛頭像の神像はヒンドゥー教の遺跡で初めて目にした。牛頭天王だとするとインドラ神の化身の一つだが、シヴァ神の持ち物の三叉戟を手にしているところから、乗り物のナンディンの擬人化した像と考える。

調べたところ、ゴーケシュアラというシヴァ神の化身像で、方向・方角を司る神だという。
ヴィシュヌ神の野猪(ヴァラーハ)への化身像。猪頭のヴィシュヌ神は、牙で大地の女神ブーミを引き上げる図柄。


5、ヴィシュワナータ寺院  (Visvanatha Temple)


ヴィシュワナータ寺院は1002年に建立された。ラクシュマナ寺院と同じく五堂形式だが、小祠堂は二塔しか残っていない。

大きな基壇は前面に伸びて、寺院本体と相対してナンディン堂が立っている。その間に階段が設けられている。


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ヴィシュワナータ寺院はシヴァ神の寺院。写真には写っていないが右側にナンディ堂が建つ。


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ヴィシュワナータ寺院に相対するナンディ堂。


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入口の階段の両側には一対の象が立っている。


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ナンディン堂。 ナンディン像。ナンディンはシヴァ神の乗り物の牡牛。


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ヴィシュワナータ寺院の入口。 ポーチとマンダバ。そして聖室の入口を望む。


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聖室にはヨニの上にリンガが祀られている。 マンダバ内の彫刻。


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三層の帯に彫られた彫刻群。真ん中にはミトゥナ像が彫られている。


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ミトゥナ像。恥ずかしがって、手の間から覗き見する女性がいい。

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足の裏の棘を抜く女性、髪を梳かす女性、背中を掻く女性像など、女性の姿態が面白い。


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テラスの上に乗った象。 基壇のマカラ像。


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こちらの壁面のミトゥナ像は、上段に「牛の群れ」性愛図と下段の覗き見の女性の表情が秀逸だ。


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シヴァ神像。右手に、先が3つに分かれた「トリシューラ」と呼ばれる三叉戟を持っている。 三屈のポーズの女神像。


■パールヴァティー寺院  (Parvati Temple)と新しいヒンドゥー教寺院


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パールヴァティー寺院 (Parvati Temple ) ピラターペシャワル(王の名前)寺院は、19世紀に建立された新しい寺院。異教徒との融和をはかるため、屋根は3種類の形をしている。前から、イスラム教のドーム、仏教のストゥーパ、ヒンドゥー教のシカラ。


5、ラクシュマナ寺院  (Lakshmana Temple)


ラクシュマナ寺院は、954年にラクシュマナ王が建立したヴィシュヌ神を祀る寺院。

カジュラホ型の完成された最初の大規模寺院で、断面図からわかるようにシカラの屋根はヒマラヤ山脈の様に高くなっていく。

この寺院は高い基壇の中央に寺院本体がそびえ、その四隅に小祠堂が配されている。


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ラクシュマナ寺院の威容を北側から眺める。


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ラクシュマナ寺院の前方にあるヴァハーラ寺院の小祠堂。ヴィシュヌ神の変身の一つヴァラーハ(野猪)を本尊とする。 ラクシュマナ寺院の傍らにあるヴァラーハ(野猪)堂。ヴァラーハ像の表面には、びっしりと674体の神の彫刻が施されている。


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ラクシュマナ寺院を正面から望む。


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マンダバの精緻な天井彫刻。四隅にはカーラが彫られている。


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マンダバの彫刻群が、外光の柔らかな光を受けてかすかに息づく。神秘的な情景。 マンダバに彫られたヴィシュヌ神像。


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ラクシュマナ寺院は基壇部分の彫刻が面白い。ナンバーが記されているので順番に紹介しよう。

この彫刻群は、ラージプート諸国の習俗の面影を伝えているという。かつてヒンドゥー教徒の間では、戦士たちが戦場に赴くとき、こうした「馬祭」が行われ、戦士たちはたくさんの女性を相手に乱交を演じた。

それは、野外でも寺院内でも行われた。死を賭して闘う戦を前にして、後世に子孫を残すための行為でもあった。この時、女性たちは妊娠する能力さえあれば、すべてラクシュミーの女神と化した。

ナンバー SP/I-1



SP/I-2


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SP/I-3


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SP/I-4~5


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SP/I-6~7


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SP/I-7


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SP/I-8


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SP/I-10


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SP/I-11


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SP/I-12~13


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SP/I-15~16


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SP/I-20~21

ナンバーは35まであるが、この辺で・・・


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躍動感あふれる素晴らしいガネーシャ像。踊るシヴァ神ならぬ、踊るガネーシャ神といったところ。 足の裏に赤い色を塗る女性像。すらりと伸びた足がなまめかしい。


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寺院の基壇彫刻。右側のミトゥナ像に注目だが、中央の象の鼻に絡まる女性像もエロチックだ。


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シカラ側面のミトゥナ像。柔らかな彫りは、石材とは思えない素晴らしい出来だ。

今まで見てきた定型化した4Pのミトゥナ像と比べると、明らかに違う現実的な表現だ。中央の性交する男女に両端の男女は手助けせず、背を向けて自慰に耽っている。その男性の下にいる矮人は太ももを伝って流れて来た精液を舐めているいう。


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上の画面と同じ髭面の男性が主役。この髭面はシヴァ神なのかな?


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シカラの側面彫刻。このラクシュマナ寺院はヴィシュヌ神を祀るので、右下にヴィシュヌ神の乗り物のガルーダ像がある。カジュラホでは、ここにあるガルーダ像以外にガルーダを見た記憶がない。


6、マタンゲーシュワラ寺院  (Matangesvara Temple)


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マータンゲシュワラ寺院は西群の中で唯一の現役のヒンドゥー教寺院であり、お祭りの信者で賑わっていた。最初期の建立であり、カジュラホ型が確立していなく、他の寺院とはスタイルが異なる。


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この寺院は有料の遺跡公園の塀の外にあり、右側のラクシュマナ寺院に隣接してある。


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その塀の間からの物売りがしつこい。


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祭りの信者たちとそれを写す観光客。この寺院の祠堂内には2.5メートルのリンガが祀られていると聞くが、地元の信者の喧騒の中、朝からの見学で疲れていたので見学はパスした。


■考古学博物館とレストラン


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考古学博物館。残念ながら撮影は禁止だった。 昼食は「地球の歩き方」推奨の、イタリアンレストラン「メディテラネオ」で摂る。味はマァマァ。


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イサーンの大地走行2000キロプラス カジュラホへの招待
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