2 仏教窟(第1窟~12窟)

「西インド015エローラ」より
●仏教窟(Wikipediaより)

エローラ石窟寺院群でもっとも古い時代のものが仏教の遺構で、それらは5世紀から7世紀の間に作られた。近隣にあるアジャンター石窟群の仏教窟と同様に、エローラの仏教窟にも二種類の石窟がある。一つはヴィハーラ窟で、エローラの仏教窟の大半がこの様式である。

ヴィハーラ窟は日本語でいう僧房や僧院のことで、修行僧がここで生活しながら瞑想を行なった。 ヴィハーラ窟には瞑想室を中心として庫裏(台所)、寝室などの付帯設備が作られている。付帯設備が多いためヴィハーラ窟は階層構造となっている大きな窟が多い。

もう一つは仏塔(または堂塔)のあるチャイティヤ窟である。チャイティヤ窟は石窟には菩薩と聖者を従えた仏陀の像が掘られている。今でいう仏殿や本堂である。

初期、中期のチャイティヤ窟は最奥部に仏間があり、仏間の中央に仏像(大半が釈迦像と思われる)が彫られている。中央の仏像の周囲には、各種の菩薩像や天女が彫られている。 これらの仏像は雑然と並んでおり、いささかグロテスクである。現在の日本のお寺でよく見られるような幾何学的な配置はしていない。 日本では法隆寺五重塔の初重内陣にある涅槃像や入滅の場面の彫像群に同じような意匠を見ることが出来る。

後期のものは吹き抜けのようなホールがあり、最奥部にストゥーパを背にした仏像が安置されている。

ヴィハーラ窟にしてもチャイティヤ窟にしても、もともとは木造である僧院と仏殿を模範としているので、石窟の内部には木造構造を模した柱や梁が彫られている。

第10窟はヴィシュヴァカルマ窟(Visvakarma)といい、一般的には大工の石窟と言われ仏教石窟の中でもっとも有名な石窟である。第10窟はチャイティヤ窟で仏教石窟の中では最後期のものである。この窟の天井の高いホールに入ると、奥にあるストゥーパが目に入る。暗さに目が慣れると肋骨のような彫刻に覆われた天井に気が付くだろう。あたかも大聖堂のような壮麗さである。ストゥーパを背にして、高さ15フィートの説法をする仏陀の像が鎮座している。



エローラへの招待 仏教窟

朝の8時48分、エローラ遺跡の最南端に急ぐ。右手に第1窟が見えてきた。その左側に第2窟から第4窟が遠望できる。胸にわくわくと期待感が高まって来た。


第1窟


エローラへの招待 仏教窟 エローラへの招待 仏教窟


残念な事に第1窟は修理工事中だった。この第1窟は、僧侶の住居としての空間で「ヴィハーラ窟」と呼ばれる。 柵外から眺めると、この第1窟には8つの部屋があるようだ。


第2窟


エローラへの招待 仏教窟 エローラへの招待 仏教窟

ここも、第1窟と同じ「ヴィハーラ窟」。入口の門衛仏がいい感じだ。 20本の柱で支えられた空間で、柱の柱頭の装飾も見事だ。11の部屋がある。


エローラへの招待 仏教窟

最奥にある仏陀の坐像。


第3窟


エローラへの招待 仏教窟

本尊の仏陀の坐像。


エローラへの招待 仏教窟

装飾のない直線状の柱が印象的な空間だ。


第4窟


エローラへの招待 仏教窟

第4窟は7世紀の開窟。入口の天井岩が破損している。2階のテラス部分の仏像が見える。


エローラへの招待 仏教窟

どこかヒンドゥー教の神像を思わせる仏像。


エローラへの招待 仏教窟 エローラへの招待 仏教窟

最奥にある本尊の仏陀の坐像。意図的に破損されている。 腰をくねらせた仏像。


第5窟


エローラへの招待 仏教窟 エローラへの招待 仏教窟

第5窟の仏陀座像。 こちらは、仏陀立像。


エローラへの招待 仏教窟

「マハルワダ窟」と呼ばれ、6世紀後半から7世紀前半の開窟。間口18m、奥行き36mの広い内部空間の講堂で、内部に二列の台座があり、ここで僧侶は勉強したり食事を摂ったりした。


エローラへの招待 仏教窟

最奥から眺めると、光の陰影で削られた石の表面が良く分かる。ただただ、成し遂げた仕事の大変さに感嘆するのみ。


第6窟


エローラへの招待 仏教窟

第6窟前から振り返って、今まで歩いて来た第1窟から第5窟を眺める。


エローラへの招待 仏教窟 エローラへの招待 仏教窟

第6窟の2階から第9窟へ通じている。 2階の仏像。


第7窟


エローラへの招待 仏教窟 第7窟は7世紀頃の開窟だが、掘りかけのまま放置されている。


第8窟~9窟


エローラへの招待 仏教窟

第8窟(1階部分)、第9窟(2階部分)で7世紀の開窟。2階の第8窟へは第6窟の2階から通じている。第9窟の正面が前堂で、前堂、中堂、本堂の順に3つの石室が並んでいる。


エローラへの招待 仏教窟

第8窟の入口の左手にあるハーリティー(中央)とパーンチカ(左)の夫婦像。パーンチカとは、毘沙門天(クベーラ)の部下にして八大夜叉大将の一人である。妻はハーリティー(鬼子母神)。ハーリティーは仏教において漢音訳した訶梨帝母(かりていも)の名でも知られる。


エローラへの招待 仏教窟

第8窟の仏三尊、三尊の間に飛天が二体。彫刻の表面には金箔が残っている。


エローラへの招待 仏教窟

第9窟の素晴らしい浮彫。


第10窟


エローラへの招待 仏教窟 エローラへの招待 仏教窟

第10窟は、礼拝専用のエローラで唯一の「チャイティア窟」。7世紀後半から8世紀前半に開窟され、ヴィシュマカルマ窟と呼ばれている。 この窟は2階建てになっており、2階部分には見事な装飾の浮き彫りが施されている。


エローラへの招待 仏教窟

ストゥーパの鼓胴部が著しく上昇し、覆鉢は卵型を形成している。基壇の前面には高さ3.3mの大きな仏座像が鎮座している。



エローラへの招待 仏教窟 エローラへの招待 仏教窟

2階部分のアーチは小さく装飾的だ。外光が神秘的な雰囲気を醸成している。 回廊の壁に彫られた仏像。


第11窟


エローラへの招待 仏教窟 エローラへの招待 仏教窟

第11窟はドータル窟と呼ばれる3階建ての石窟。7世紀後半から、8世紀前半の開窟といわれる。まるでマンションのようだ。 仏陀座像。


エローラへの招待 仏教窟

装飾のない簡素な角型の石柱。


エローラへの招待 仏教窟

第11窟の3階から眺めた広大なデカン高原。


第12窟


エローラへの招待 仏教窟

第12窟は修理工事中で見学できず。第11窟と同じ3階建ての僧侶の住居としての「ヴィハーラ窟」。ここには素晴らしい彫刻が多くあると聞いていたので見学出来ず残念。

なお、第11窟と第12窟はあの大規模仏教石窟群の「アジャンター」にも無い特徴的な石窟といえる。まるで、3階建てのマンションを彷彿とさせる。


エローラの仏教石窟群(第1窟~12窟)を見学した印象として、圧倒的な迫力と面白さで迫るヒンドゥー教石窟群や、精緻で華麗な彫刻のジャイナ教石窟群に比べると内容や面白さや印象は一番劣ると思う。

仏教遺跡の好きな方は、是非「アジャダー遺跡」と「サーンチー遺跡」を見学されたい。


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イサーンの大地走行2000キロプラス エローラへの招待
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