第24部 タイのシルクロードをゆく
旅の始めに
古代のインドとの交易所跡を調べるため、タクアパのコカオ島にフェリーで渡る

(図1)



(図2)


■タイのシルクロードを巡ろう

2017年の「イサーン最後の旅」で、タイの主なクメール遺跡の再訪や未見だった Ta Khwai や Khao Plai Bat の遺跡を訪れ、写真撮影がOKとなったイサーンやバンコクの博物館での写真を撮り終え、自分の心の中でクメール遺跡探訪の終結宣言をした。

そこで、2002年からのタイのクメール遺跡探訪を総括する意味で「タイ美術史年表」を作成した。(図1)

年表を作成しながら、クメールと同時代の、「ドヴァーラヴァティー」と「シュリーヴィジャヤ」の遺跡や遺物についても調べていたら、古代の交易路(シルクロード)について興味が湧いてきた。





★ドヴァーラヴァティー

ドヴァーラヴァティー(堕羅鉢底)は、6世紀~11世紀頃にかけて、モン族がナコンパトムを中心としたチャオプラヤー川沿いの都市国家の連合体といわれている。

「ふうみん」がタイ全土を旅していると、ナーンの国立博物館やビエンチャンのタートルアン、イサーンのメコン沿いのタートパノムやウボンラチャターニーの Dong Muang Toey などで、ドヴァーラヴァティーの遺物や遺跡を見てきた。

ドヴァーラヴァティーの中心地のナコンパトムから、遥か遠い場所だったので少なからず驚いた。これらの体験によっても、ドヴァーラヴァティーがタイの広範囲な地域を影響下に置いていた思う。(図2)

また、メコン支流のチー川やムーン川流域にも、環濠集落や製塩、製鉄遺跡等が残されている。

ナーン ビエンチャン
タートパノム ウボンラチャターニー



(図3)


●クーブア(Khu Bua)遺跡の地図

2008年にタイでドヴァーラヴァティー遺跡の本を購入した。この本はタイ語で書かれているので、内容は全く分からないが地図と写真だけは分かる。

本に掲載されていた地図(図3)の遺跡は何処にあるのだろう?と探していたが、ラチャブリーにあるクーブア(Khu Bua)遺跡と判明した。

クーブア遺跡のドヴァーラヴァティー時代には、タイ湾の海岸線は今よりも近くにあり、交易で大いに賑わったらしい。

遺跡の本
Origins of Thai Art
この遺跡の出土品は、バンコク国立博物館に所蔵されており、有名な「5人の楽師」のレリーフもあるという。このレリーフは、蔵書「Origins of Thai Art」の表紙を飾る名品である。

そこで、クーブア遺跡を始めとしたドヴァーラヴァティーの交易路の遺跡と博物館を巡ろうと思い立った。






(写真1)


★シュリーヴィジャヤ

シュリーヴィジャヤ(室利仏逝)は、7世紀~12世紀頃のマラッカ海峡の交易ルートを広く支配し、多くの港市国家をしたがえる交易帝国だが、遺跡等はわずかしか残っていないし詳細は不明だ。

2007年の「タイ大周遊」で南部を巡った時、ナコンシタマラートとソンクラーの国立博物館が休館日のため残念ながら見学できなかった。

チャイヤーの国立博物館のみが見学でき、タイのヴィーナスと言われる観世音菩薩(写真1)を見たが、大好きなクメールとの違い(インド化し過ぎている)を感じ、美しいと思ったがそれ以上の興味は沸かなかった。

しかし、12年ぶりに南タイに行くのだから、シュリーヴィジャヤについても調べて見たい事とがあった。それは、「海のシルクロード」と、それに伴う「マレー半島の横断路」の港市国家についてだ。

また、シュリーヴィジャヤの首都はチャイヤーとの説もあり、関連する遺跡や博物館を訪ねたいと思った。



(写真2)


●海のシルクロード

2016年にインドのチェンナイの南60キロの場所にあるマハーバリプラムの遺跡(写真2)で、祠堂の軒先に「馬蹄形の窓から覗く顔」のレリーフの意匠を見た時、東南アジアとインドとの関連性に気が付いた。

ここパッラヴァ朝のマハーバリプラムは、東南アジアとインドを結ぶ「海のシルクロード」の港市国家の一つなのだと。

下記に、東南アジア各国の遺跡の「覗く顔」の写真を掲載した。タイのドヴァラヴァティー、カンボジアのクメール、ベトナムの扶南、ジャワのマタラム。

タイ カンボジア
ベトナム ジャワ島



(図4)


●マレー半島の横断路

インド洋でのモンスーンの発見が古代の東西交易(インド~中国)を飛躍的に発展させた。モンスーンは夏季に南西風が、冬季に北東風がインド洋を吹き渡る。

4~6世紀の東西交易は、マレー半島の海岸に上陸して陸路を横断して輸送し、ベンガル湾やタイ湾に出た。この様な横断路(図4)は10本程あったという。

このため、マレー半島両岸に多くの港市国家(ヌガラ)が発生し、頓遜、盤盤、狼牙脩は、タイ湾とベンガル湾の中継地として発達した。

「ふうみん」は、この中の「盤盤」に注目した。4世紀末に天竺からバラモンが盤盤に渡り、そして扶南の王(カンディニア・ジャヤヴァルマン)になったという。そして、盤盤は扶南の支配下で繁栄した。

6世紀後半、扶南は属国の真臘(クメール)に敗れて盤盤の首都チャイヤーに逃れた。

海洋国家の扶南の船は、長さ24m幅1.5mと大きく、百人で櫂を漕いだという。この船に乗り、多くの人々や物資が海を渡ったものだと思う。


(写真3) (写真4)


●チャイヤーとタクアバのビシュヌ像

タクアバ周辺を Google Map で調べたところ、盤盤の交易所跡がコカオ島に「Thung Teuk archeological site」があり、対岸の山の頂上にある「Khao Phra Neur」遺跡から発掘されたヴィシュヌ像(写真3)は、バンコク国立博物館に展示されている。

近くの「Khao Phra Narai」遺跡からもヴィシュヌ像が発掘され、プーケット国立博物館に展示されている。

反面、チャイヤーからスラターニー周辺は Google Map で調べるも難航し、「Khao Srivijaya」遺跡を見つけた時は嬉しかった。このスラターニーの遺跡から発掘されたヴィシュヌ像(写真4)はバンコク国立博物館に展示されている。

インド洋に面したタクアバで発掘されたヴィシュヌ像と、タイ湾に面したチャイヤーから発掘されたヴィシュヌ像を結ぶと、マレー半島の横断路(シルクロード)を描くことができる。





■今回の走行計画

今回の旅は11月を予定していたが、家人の「yayo」の都合で12月になり、直ぐにJALの航空券を手配した。

そして、日程を組んでいた時にふと思い出した。確か12月にはタイの祝日があるのだと!早速調べると、5日が「国家の日」、10日が「憲法記念日」とある。

この休日は国立博物館の休館日だ。まして、タイの国立博物館は週休2日(月・火)で、開館時間も9時~4時までと日本に比べて短い。

そんな制約の中で、シュリーヴィジャヤ関連の南部、ドヴァーラヴァティーとクメール関連の西部、中央部、東部の走行ルートを決めて、20ほどの博物館を見学しなくてはならない。

下記の通り「見学予定 博物館一覧表」を作成し、国立博物館の休館日には遺跡の見学や移動日にした。

日程を組み終えて、一番残念なのがバンコク国立博物館が入っていないことだ。

2年前の旅で、バンコク国立博物館のクメール関係はすべて写真に収めたが、ドヴァーラヴァティーとシュリーヴィジャヤは一部しか撮影していない。

見学可能の旅の初日(12月3日)と最終日(12月17日)は、ともに火曜で休館日だ。一日遅ければいいのだが仕方がない。残念だが、今回の見学は断念しよう。


2019年12月吉日
「ふうみん」





★見学予定 博物館一覧表

訪問日 No 博物館名 休館日 所在地
12月4日 1 チュンポン国立博物館 Chumphon National Museum 月・火・祝 Chumphon
12月4日 2 ワットプラボロンマタートサウィ博物館 Wat Phra Borommathat Sawi Museum 無休 Chumphon
12月4日 3 チャイヤー国立博物館 Chaiya National Museum 月・火・祝 Surat Thani
12月6日 4 ナコンシタマラート国立博物館 Nakhon Si Thammarat National Museum 月・火・祝 Nakhon Si Thammarat
12月6日 5 タクシン民俗博物館 Thaksin folkore Museum 無休 Songkhla
12月6日 6 ソンクラー国立博物館  Songkhla National Museum 月・火・祝 Songkhla
12月7日 7 ワットクロントム博物館 Wat Khlong Thom Museum 無休 Krabi
12月8日 8 テープナライホーン博物館 Thep Narai Phorn Museum 無休 Phang Nga
12月10日 9 バンカオ国立博物館 Ban Kao National Museum 月・火・祝 Kanchanaburi
12月11日 10 サコシナライ町立博物館 Sa Kosi Narai Community Museum 月・火・祝 Ratchaburi
12月11日 11 プラパトムチェディ国立博物館 Phra Prathom Chedi National Museum 月・火・祝 Nakhon Pathom
12月12日 12 ラチャブリー国立博物館 Ratchaburi National Museum 月・火・祝 Ratchaburi
12月12日 13 クープア博物館 Ban Khu Bua Museum Ratchaburi
12月13日 14 ウートン国立博物館 U-Thong National Museum 月・火・祝 Suphanburi
12月13日 15 スパンブリー国立博物館  Suphanburi National Museum 月・火・祝 Suphanburi
12月13日 16 チャオサームプラヤー国立博物館 Chao Sam Phraya National Museum 月・火・祝 Ayutthaya
12月13日 17 チャンカセーム国立博物館 Chantarakasem National Museum 月・火・祝 Ayutthaya
12月14日 18 インブリー国立博物館 In Buri National Museum 月・火・祝 In Buri
12月14日 19 ナーラーイ国立博物館 Phra Narai National Museum 月・火・祝 Lopburi
12月15日 20 プラチンブリー国立博物館 Prachinburi National Museum 月・火・祝 Prachinburi
12月16日 21 ワットトンツア博物館 Wat Thong Tua Museum 無休 Chantaburi

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